今年は、昨年あさがおホールが20年を迎え、平成の時代も終わる中で、私たちの働くあさがおホールが、この地域の中で、多くの方々の思いにより、どのような経緯で設立に到ったのかを知るため、「あさがおホール設立の歴史を知る」と題して、平成31年3月13日に前朝来市長(旧朝来町長)の井上英俊様を講師に迎え、職員研修会を開催しました。

「あさがおホール設立の歴史を知る」

 平成5年10月30日に前町長の急逝により、町長(当時は県下で一番若い自治体の長)に就任しました。
 当時の朝来町には多くの課題があり、特に関西電力の世界最大の揚水発電所となる奥多々良木発電所の増設事業(後にあさがおホール建設に大きく関わることになる)、但馬の高速道路時代の幕開けとも言える播但連絡道路の延伸事業、町内の上下水道整備(当時全国では約40%の普及率だったが、約6年で旧町内は100%に達する)の推進を図ったインフラ整備事業などがありました。こうして生活様式が変わっていく中で、同時に高齢化、過疎化が社会問題となり、平成6年度から健康福祉ゾーンの整備計画が本格的に始まりました。
 当時の旧朝来町も23.1%と国の平均を大きく上回っており、この計画で特別養護老人ホームを中心とする保健福祉の具体的な計画が示され、朝来の施設福祉を考える会の会員を公募し、施設に対する各自の貴重な意見を構想の基本において進めるのと同時に、地域住民へのコンセンサスにも奔走し、大きな4つの柱を考え、進めることになりました。

・健康福祉ゾーンは町の中心に(朝来町を福祉の町へ)
 建設場所については、学校、行政施設が地域の中心にあるように、高齢者の施設についても地域の中心に設けること、介護を必要とする高齢者が地域の住み慣れた場所で生活されることを大切にしていくべきだということから、地域の中心に位置することにより、地域住民だけでなく、子育て世代や子供との交流をしていくことで認知症の高齢者が、また身体に障害をもたれた方が、地域の一員として過ごせることが必要であると考えました。

・小規模多機能施設
 一人ひとりに合わせた個別ケアを展開しやすいように、現在では当たり前となっている全室個室を整備した小規模施設(30床)。他にも認知症の方が共同で生活し、馴染みの入居者と職員で生活するグループホーム2棟(14床)、要介護の状態ではなくても一人暮らしに不安のある方が利用できる高齢者生活福祉センター(7床)、地域の方との交流の機会を作ると共に町の保健行政の中心的機能を果たす多目的ホールと、今まで以上に在宅介護を中心とした延長上に施設サービスがあるという考え方から様々なニーズに応えるべく多機能な施設を整備した。

・公設民営の仕組み
 「公(町)」は、町全体が福祉を考える仕組み考え、「民(法人)」は、介護サービスに特化した集団として質の高いサービスを提供するとし、充実した施設介護が、在宅介護を支援する仕組みをつくり、 「公(町)」と「民(法人)」が共に考え、旧朝来町の福祉を充実させていく考え方

・三位一体の関係づくり
 行政(施策、調整等)、社会福祉協議会(コミュニティ作り)、社会福祉法人(介護専門的ケアサービス)とそれぞれの役割を明確にし、補完し合う関係

 以上のコンセプトに基づき、平成9年にあさがおホールが完成し、公募の結果、社会福祉法人ひまわりに運営委託を決定しました。平成17年の市町村合併後には、ケアハウス朝来を併設。平成21年にあさがおホールを社会福祉法人ひまわりに施設譲渡(平成30年4月にはケアハウス朝来の施設譲渡)し、現在に至ります。

 また、社会福祉法人ひまわりに決定したことで、進めたことがあります。それは接遇でした。あさがおホールの職員の皆さんは訪問した時だけではなく、町で出会ったときでも挨拶を当たり前のようにするその素晴らしさを、行政職員も見習うべきだと考え、全職員への接遇訓練にとどまらず、介護に対する意識向上のため入居体験(寝たきり体験)や後に認証取得したISO(国際標準化機構)に繋がりました。

 組織というものは、一定期間が経過すると甘えやゆるみが出てきます。だからこそ常に評価し、前例踏襲ではなく、改善をし続けなければなりません。そのために行政としてISOを認証取得しましたが、そのことに賛同し、実践してくれたのも社会福祉法人ひまわりでした。組織で働く皆さんは創意工夫を持って挑戦し続けることが大切であり、自身の案が実現するように「やらされている感」ではなく、「やっている感」を持っていけば、介護現場が直面している課題とする人材確保(外国人の技能実習生を受け入れし、どう成長していくか)や、2040年問題等について克服し、自ずとあさがおホールの利用者だけではなく、ひいては安心・安全の拠点として住民(地域)の利益になるものだと確信しています。

設立当初から知る職員も少なくなった今、出席した多くの職員が、この地に「あさがおホール」が設立された経緯を知ることにより、法人理念でもある「地域になくてはならない存在になろう」を、より実感し、貴重な機会となりました。